同人誌の入稿データの作り方|解像度・塗り足し・入稿前チェック
はじめて同人誌を作ったとき、「データって何を用意すればいいの?」と戸惑った方は多いはずです。印刷所に送るデータには、デジタル画像とは少し違うルールがあります。この記事では、入稿データ作りで迷いやすいポイントをひとつずつ確認していきます。印刷所によって仕様が異なる部分もありますので、必ず各印刷所の入稿ガイドも合わせてご確認ください。
入稿データとは
入稿データとは、印刷所に送る最終的なファイルのことです。画面で見るための画像データとは異なり、印刷用に必要な解像度・カラーモード・塗り足しなどが整っている必要があります。印刷会社のスタッフがそのまま機械に流し込めるよう、規定に合ったデータを用意することが前提です。
「とりあえず高解像度にしておけば大丈夫」「Illustratorで書き出せばOK」と思って進めていると、実際に印刷されたときに「色が思ったより暗い」「端が切れてしまった」というトラブルが起こりやすくなります。基本を押さえておくだけで、そういった失敗をかなり防げます。
カラーモード:印刷はCMYKが基本
デジタル作業ではRGB(赤・緑・青の光の三原色)で色を表現しますが、印刷ではCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックのインクの組み合わせ)を使います。RGBのまま入稿すると、印刷所の側でCMYKに変換され、特に鮮やかな青や緑が暗くくすんだ色になりがちです。
表紙や彩色ページをカラーで作成する場合は、作業の段階からCMYKカラーモードに設定しておくと、仕上がりのイメージと近い状態で確認しながら進められます。PhotoshopやClip Studio Paintではドキュメントのカラープロファイルを変更できます。ソフトによって対応が異なりますので、使用ツールのマニュアルも参照してください。
なお、CMYK変換をすると色域(表現できる色の範囲)がRGBより狭くなるため、RGBで作ったイラストをそのまま変換すると彩度が落ちる場合があります。変換後に色調補正をかけて整えるのが一般的な対処法です。
解像度:用途に合わせた dpi の目安
解像度とは、1インチあたりに含まれるドット数(dpi)のことです。解像度が低いと印刷したときに文字や線がギザギザになります。
用途別の一般的な目安
- カラーページ(フルカラー表紙など):350〜400dpi 程度が目安とされることが多いです。
- グレースケールページ(鉛筆系トーン・アナログ風):600dpi 程度が目安とされることがあります。
- モノクロ2値(コミック原稿・線画):600〜1200dpi 程度が目安とされることが多いです。
ただし、これらはあくまで一般的な参考値です。印刷所ごとに推奨解像度を指定しているケースがありますので、必ず入稿先の仕様ページを確認してください。また、解像度を後から上げても印刷品質は向上しません。最初から高解像度で作業を開始することが大切です。
塗り足し(裁ち落とし)とトンボ
仕上がりサイズの端ギリギリまで色や背景を配置したいとき、印刷・断裁の工程でわずかなズレが生じると白い余白が出てしまうことがあります。これを防ぐために「塗り足し」を設けます。
塗り足しとは、仕上がりサイズよりも外側に少しはみ出して背景やイラストを延長しておくことです。一般的には上下左右それぞれ3mm程度の塗り足しが求められることが多いですが、印刷所や判型によって異なります。必ず各印刷所の指定を確認してください。
トンボとは、断裁位置を示すためのガイドライン(小さな十字マーク)のことです。入稿テンプレートを使う場合はあらかじめ設定されていることが多いので、テンプレートを活用すると設定ミスを防ぎやすくなります。
安全マージン:大事な要素は内側に
仕上がりサイズの端に近い部分は、断裁のズレで切れてしまうリスクがあります。そのため、セリフ・キャラクターの顔・タイトルロゴなど「絶対に切れてほしくない要素」は、仕上がり線から内側に一定の余白(セーフゾーン・安全マージン)を設けた範囲内に収めるようにしましょう。
安全マージンの目安も印刷所によって異なりますが、仕上がり線から3〜5mm 内側に重要な要素を収めておくと安心なことが多いです。入稿テンプレートには安全マージンの参考線が引かれている場合もあります。
ノンブル(ページ番号)
ノンブルとはページ番号のことです。印刷所によってはノンブルの位置や表示方法に規定がある場合があります。特にオフセット印刷では、製本の工程でページ順が崩れないようノンブルを入れることが推奨されることが多いです。
コミック原稿の場合、ノンブルを本文ページの下部(内側または外側)に小さく入れるのが一般的とされています。表紙や扉ページなど「ノンブルなし」で扱いたいページには、あらかじめノンブルを非表示にする設定をしておきましょう。
データ形式:印刷所の指定に従う
入稿できるデータ形式は印刷所によって異なります。よく使われる形式としては PSD(Photoshop)、PDF、TIFF などがありますが、どの形式が望ましいか・どの設定で書き出すべきかは印刷所ごとに違います。
入稿前に必ず対象の印刷所の「入稿ガイド」や「データ作成マニュアル」を確認しましょう。多くの印刷所がWebサイトに詳細な説明を掲載しています。不明点はサポートに問い合わせると丁寧に教えてもらえることが多いです。
フォントのラスタライズ・埋め込み
テキストをそのままデータに残した状態で入稿すると、印刷所の環境にそのフォントがインストールされていない場合に文字化けや代替フォントへの置き換えが発生するリスクがあります。
対策として、入稿前にテキストレイヤーをラスタライズ(画像化)するか、フォントの埋め込みを行うのが一般的です。Photoshopであればレイヤーをラスタライズ、Illustratorであればフォントをアウトライン化する方法がよく使われます。一度ラスタライズ・アウトライン化すると後からテキストを編集できなくなるため、必ずバックアップを残してから作業してください。
入稿前チェックリスト
- カラーモードは印刷所の指定どおりか(CMYKまたはグレースケール等)
- 解像度は印刷所の推奨値を満たしているか
- 塗り足しは指定のサイズ分取れているか
- 重要な要素は安全マージン内に収まっているか
- ノンブルは入っているか・位置は仕様どおりか
- テキストはラスタライズまたはアウトライン化されているか
- ファイル形式・書き出し設定は印刷所の指定どおりか
- ファイル名に全角文字・スペース・記号が含まれていないか(印刷所によっては不可)
- ページ数・ページ順は正しいか
- 表紙・裏表紙・背表紙のデータは揃っているか
早めの入稿で早割を活用する
多くの同人誌印刷所では、締切より早く入稿すると料金が割引される「早割」制度を設けています。締切ギリギリの入稿はデータ確認の時間が少なくなり、万が一ミスがあったときに対応できないリスクもあります。
原稿作業のスケジュールを組むときは、「入稿締切日」ではなく「早割の締切日」を目標にすると、コストも抑えられてトラブル対応の余裕も生まれます。締切日と早割の日程は印刷所のWebサイトや入稿ページで確認できます。
入稿データの作成は最初は難しく感じますが、一度流れを覚えてしまえば次の冊子からはスムーズに進められます。焦らず、印刷所のガイドを手元に置きながら確認しながら進めていきましょう。